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越前おろしそばの歴史や全て
福井名物「越前おろしそば」日本で一番おいしい理由
越前おろしそばについて
「越前おろしそば」が日本で一番美味しい理由を調査しました。
目次
越前おろしそばとは?

越前そばの歴史の始まりは、室町時代にまでさかのぼります。1473年、越前国を治めていた朝倉家第7代当主朝倉孝景が、一乗谷築城の際に籠城戦や飢饉の際の非常用食料として、蕎麦の栽培を奨励したことに始まります。越前国は当時から全国でも有数の米どころで、主食となる米は豊富にあったはずなのに、どうして蕎麦の栽培が奨励されたのか?その理由は米と蕎麦の収穫時期の違いにありました。一般的に米は種を蒔いてから約120日で収穫できるのに対し、蕎麦は種蒔きから約75日と短い期間で収穫が可能な為、非常食としては非常に優秀だったようです。しかしこの頃は、蕎麦粉を熱湯でこねて餅のような形に丸めた「そばがき」や「蕎麦団子」として食べられることが多く、今のそばの形である「そば切り」が庶民にも広く食べられるようになったのは、江戸時代に入ってからと言われています。江戸時代初期、福井藩初代藩主の結城秀康の家臣として、京から本多冨正という武将がやってきます。冨正は府中(今の越前市)に赴任することになるのですが、その際に京から、金子権左衛門という蕎麦職人を連れてやってきていました。冨正は、収穫時期も短く荒地でも栽培しやすい蕎麦の特徴に目をつけ、食料生産を安定させるため領民に蕎麦の栽培を奨励しました。また金子権左衛門の助言を受け、「そば切り」に辛味大根をおろしたものをかけた「おろしそば」を、お抱えの医者や蕎麦打ちに作らせました。これが現代まで400年以上続く「越前そば」の起源であると考えられています。こうして庶民の間にも広まっていった越前そばですが、「越前そば」という名前が全国に広まったのは昭和時代。昭和22年10月に昭和天皇が福井に来られた際、2杯ものおろしそばを召し上がられ、その後皇居に戻られた後も、「越前のそばは大変おいしかった」と懐かしがられたという逸話から、「越前そば」という名称が定着していったと言われています。
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越前そばと一般的なそばとの違い

全国的に「そば」というと、信州(現在の長野県周辺)の更科そばに代表されるような「白っぽいそば」が一般的です。更科そばのような一般的なそばは、そばの実を挽いた際に一番最初に出てくる胚乳の中心部分のみを集めて作られており、色のついたそばの実の殻は取り除かれているため、仕立てた時に白い色合いに仕上がります。一方で越前そばは、通常取り除かれるそばの実の殻も一緒に挽いて作られており、その為そば本来の香りと風味が強く、「黒っぽい色合い」に仕上がるのが特徴です。また、そばを打つときには普通、つなぎとして小麦粉が使われるのですが、越前そばでは小麦粉の代わりに強力粉を使用します。そのため、一般的なそばよりも歯応えのある硬い食感に仕上がり、ツルツルとした喉越しを楽しむというよりは、しっかり噛んで味わうといった楽しみ方ができる独特なそばになっているのです。

トッピングにも大きな特徴があります。一般的なそばのトッピングといえば、刻みのりと薬味くらいのものですが、越前そばに欠かせないのが何と言っても「大根おろし」。「越前そば=おろしそば」と言えるくらい、福井県内でそばを提供しているお店のほとんど全てで、そばを頼めば大根おろしがついてきます。中には、漬け汁にあらかじめ大根おろしが溶かれているお店や、そばの上にこれでもかと山盛りの大根おろしを乗せて提供しているお店もあります。また現在では大根おろしの他に、カツオ節・刻みねぎを加えたトッピングが越前そばの定番となっています。
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越前おろしそばの旬

越前そばの栽培は、旧盆(8月中旬)の頃の種蒔きに始まります。9月中旬〜10月下旬頃には可憐な白い花が咲き乱れ、畑一面が美しい白一色に染まります。その後、茎の部分が鮮やかな赤色に変わり、白い花が黒い実に変わる11月初旬頃から収穫が始まります。その為11月中頃から、「新そば」として、越前そばは旬の時期を迎えます。
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越前そばの美味しさの秘密
〜伝統の石臼挽きと玄そば〜
越前おろしそばの美味しさの秘密は伝統技術を守り抜いた石臼挽きの製法

越前そばの原料となる、福井県産の玄そば(製粉前のそばの実)は、小粒で皮が薄いのが特徴です。実は玄そばの良し悪しは、栽培する地域の緯度の高さに関係しています。北緯36度〜北緯38度線の地帯で栽培される玄そばは良質なものが多く、味や風味が強いそば粉になると言われています。そして福井県は北緯36度線上に位置していますから、福井県で栽培される玄そばは、軒並み非常に質の良いものになるのです。越前そばは製粉方法にも強いこだわりがあります。現代ではそば粉の大量生産に対応するため、一般的なそば粉の製粉は機械によるロール挽きという製法で行われています。ロール挽きは製粉スピードが早く生産性が高い一方で、機械ですり潰すため、玄そばの風味が損なわれてしまうデメリットがあります。そんな中、越前そばの原料となるそば粉を製粉する、福井県内の全ての製粉企業では、昔ながらの石臼挽き製法を取り入れています。石臼挽き製法では、製粉スピードはどうしても遅くなってしまいますが、その分粉をすると同時に粉を練る要素も追加され、そば粉の粒子が丸いまま維持されるので、そば独特の風味をしっかりと保ったまま製粉することができるのです。また使用されている石臼も、職人によって見立てられた、福井県美山町小和清水産の石臼に限定するなど、徹底したこだわりぶり。原料・製法・道具の全てにこだわり尽くすことで、越前そばは長年に渡りその味わいを守り続けているのです。
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「越前おろしそば」がスーパーフード?
福井県が健康長寿県となっているのは、越前おろしそばと関係があるのかも。

そばは古くから、食べると健康になり長生きすると言われてきた健康食でした。その理由はそばに含まれる豊富な栄養素にあります。例えばそばには、「ルチン」というポリフェノールの一種が多く含まれています。このルチンには、血管を丈夫にして血液をサラサラにしてくれる効果があり、動脈硬化・脳梗塞・糖尿病などの生活習慣病の予防に効果を発揮します。他にも「コリン」という成分も含まれており、このコリンは肝臓を保護するだけでなく、脂肪を付きにくくする効果があり、脂肪肝などの肝臓の病気の予防にも役立ちます。 またそばには、疲労回復や免疫向上に役立つ「ビタミンB1・ビタミンB2」、老化を防ぐ「ビタミンE」、さらには体づくりに欠かせない「必須アミノ酸」も含まれており、丈夫な体づくりから美容・アンチエイジングまで、そばは万能の健康食なのです。 それに加えて越前そばには、必ず大根おろしが添えられていますが、大根おろしにはビタミンCが多く含まれています。なんとこの大根おろしに含まれるビタミンC、先ほど紹介した「ルチン」の働きを助けてくれる作用があるのです。ルチンとビタミンCを同時に摂取することで、毛細血管を強化する働きが生まれ、ルチンの効能を最大化してくれる相乗効果が生まれます。さらには、そばと大根おろしを同時に食べることで、がんを抑制する働きがあるとも言われています。 まさにスーパーフードとも言える「越前おろしそば」。これを生み出した本多冨正をはじめ、江戸時代の人々がこれらの科学的知識を知っていたはずはありませんが、図らずもこれほどまでに健康的な食文化が育まれ、受け継がれてきたことが、今でも福井県を健康長寿県たらしめている理由なのかもしれません。
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